ウイークリーニュース | 2023年10月1日~15日

Codo Advisory は、世界と日本の気候変動対策や企業のサステナビリティに関する最新のイベントやトレンドをお伝えしております。直近の注目ニュースをまとめてご紹介いたします。

  • 日本は、2030年までにCO2排出量を46%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを達成する野心的な目標を掲げたカーボンクレジット取引を導入した。 
  • 福島の原発事故による原子力発電の減少に伴い、国内電力システムが緊張状態に陥るなど、クリーンエネルギーへの移行に関する課題に直面している。 
  • 日本の電力発電における化石燃料の大幅な依存度は、アメリカや中国などの経済大国とは異なり、再生可能エネルギーの展開において大きな進展を遂げている国々と一線を画している。 
  • 交通や産業といった重要な分野における化石燃料需要の低減が進まず、EV自動車やクリーンエネルギーの採用が他の地域に比べて低いため、日本のエネルギー転換の取り組みは遅々としている。 

詳しくは: Reuters, Nikkei Asia, Bloomberg 

Codoのコメント: 日本は世界で第5位の二酸化炭素(CO2)排出国であり、独自のカーボンクレジット制度を立ち上げたことは、気候変動への取り組みにおいて賞賛すべき一歩だ。この市場志向のアプローチは、企業にCO2排出を削減するインセンティブを提供し、クリーンテクノロジーへの革新と投資を促進している。しかし、カーボンクレジットは一時的な解決策に過ぎないことを認識することが不可欠だ。例えば、カーボンクレジットはしばしば、ビジネス戦略を見直し統合的に脱炭素化を実施するためではなく、排出削減を先送りにするために使用されることがある。その結果、企業は短期的なコスト(財政的およびステークホルダーの支持を得るなど)を削減できる一方、長期的には市場の炭素価格に依存し、今後炭素価格が高騰した際はその支出に苛まれることとなる。これらの課題に加え、適切なオフセットプロジェクトが少数であることからオフセットプロジェクトの活用も限られており、発行されたクレジット自体も二重計上の課題や説明責任の問題に直面している。カーボンクレジットの真の目的は、包括的な戦略を実現するために、体系的な変革を通じて大規模な変化をもたらすプロジェクトを推進することであるべきだ。 

  • 7月の豪雨の影響で、インドは非バスマティ白米の輸出を禁止する決定を下したことが、世界的な米価上昇を引き起こす可能性がある。 
  • この輸出禁止により、特にアジア地域を中心に、数十億人の人々にとって主食である米に関する世界的な食糧安全保障が脅かされることが懸念される。 
  • この状況は、気候変動と直接関連した出来事に対する世界的な食品供給チェーンの脆弱性を浮き彫りにし、潜在的な食品不足や価格の問題に対処するための効果的な戦略の必要性を示している。 

詳しくは: Nikkei Asia, BBC 

Codoのコメント: 米は世界の多くの地域において重要な主食だ。大量の水と嫌気発芽期間が必要であるため、気候変動に対して最も脆弱な穀物の一つとなっている。これは気候変動がもたらす混乱の一例に過ぎない。また、気候変動と世界の食品安全保障との間に否応ない関係があることを鮮明に示している。気候変動は遠い抽象的な概念ではなく、まさに今、世界中で進行しており、ますます深刻で予測困難な気象パターンを引き起こしている。現在の在り方を続けることによって、極端な気象事象がより頻繁に起こり、より壊滅的になるだろう。気候変動による食品安全保障へのリスクは、米と小麦粉の主要生産国であるウクライナなどの地域における地政学的な紛争によって増幅されている。食品サプライチェーンの耐久性を高めるための取り組みは行われているが、多岐にわたるストレスに適応し続けることができる可能性は低い。食品安全保障は一地域だけでなく、いまや世界的な問題となっている。 

  • 欧州銀行監督庁(EBA)は、EUの銀行向けの資本要件フレームワークを見直し、環境および社会的リスクを統合するための変更を行っている。これはESG要因を業界全体の資本バッファーに義務的に統合する世界初の試みである。 
  • 最低要件(Pillar 1)に関しては即時変更が行われる一方、他の変更は段階的に導入され、併せて新たな法律を検討していく必要がある。 
  • この動きは、特に気候変動と不平等といったESG要因が、従来の金融リスクカテゴリーに影響を与え、金融の安定性に対する高まる脅威を反映している。 
  • この取り組みは、EU全体での気候変動への取り組みと、持続可能なファイナンスへの移行を示しており、EUは気候関連の金融リスク対応において世界をリードしているといえる。 

詳しくは: The New York Times, Financial Times, Reuters 

Codoのコメント: この動きが特に重要であるのは、それが単に些細な調整ではなく、金融業界全体の基準を設定する包括的な変革であるためだ。また、この改定は国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)などの取り組みによる、投資とリスク評価に対するより責任ある倫理的アプローチへの世界的な要請と整合している。規則を改定することで、EBAはESG促進に向けた要因が金融安定の中心にあることを示し、気候変動への対処が倫理的または環境的な懸念にとどまらず財務上必要不可欠な要件であることを明確にしている。また、ESGの観点が、実際の投資として活用され、成熟してきたことを示す重要な事例にもなりうる。EUがこの画期的な一歩を踏み出すことで、世界中に波及効果が期待される。他の国や地域も確実に注目し、同じような動きを検討することだろう。 

  • 日本政府とマレーシアの国営石油会社ペトロナスは、気候変動緩和策として、日本で排出される二酸化炭素(CO2)を輸出し、マレーシアで貯蔵することに合意した。 
  • この取り組みは、大気からCO2排出を減らすことで気候課題に対処する革新的な解決策を示している。 
  • また、気候変動の緩和において国々が排出削減とCO2貯蔵に協力する国際的な取り組みであり今後の国際協力に向けた前例となる可能性がある。 
  • 気候変動という複雑な問題に取り組み、持続可能な未来を築くにあたって、国境を越えた協力が必要であることを示している。 

詳しくは: Nikkei Asia, The Japan Times, Reuters 

Codoのコメント:  日本には地質学的に炭素の貯蔵に適した場所が非常に限られているため、この二国間の合意は重要だ。日本は炭素の捕集能力を有しており、設備稼働も行っている(九州の設備では1日あたり500トンの炭素を捕集が可能)。しかし、経済的にコストが合わず実運用に至っていない。炭素捕集および炭素貯蔵(CCS)は、完全な脱炭素化が不可能な産業や、脱炭素化が遅れる産業(鋼鉄、建設など)にとって重要な技術である。しかしながら、産業界全体で一律に適用されるものではない。カーボンクレジットと同様に、企業は製品、サービス、そしてビジネスモデルなど、設計段階から革新的な排出削減を行う必要があることを理解して施策検討を行うべきだ。

  • クリーンエネルギーへの移行が国際的に高まる中、EUは化石燃料の補助金を終了する明確なスケジュールを確立できていない。 
  • COP28を目前に、化石燃料補助金の明確な終了日を設定できなかったことにより、EUが気候変動に対処する意欲があるのか問われることになる。  
  • また、炭素削減目標の達成と持続可能なエネルギーソリューションへの移行に対する進展を阻害する可能性がある。 
  • EUにおける炭素型エネルギーからの脱却の難しさや、問題の複雑さが明らかとなった。 

詳しくは: Bloomberg Green, Le Monde   

Codoのコメント: 化石燃料に対する補助金は気候目標に反するだけでなく、持続不可能なエネルギーシステムの維持に繋がっている。気候危機の緊急性を考慮するとこれらの補助金を段階的に廃止するための明確なスケジュールを立てることが優先されるべきである。明確なスケジュールを設定できなかったことにより、EUが気候目標を達成する意思があるのか、その姿勢に懸念が持たれ、EUは国際社会でのリーダーシップと信頼性を損なう可能性がある。サステナビリティ分野における国際的なリーダーとして認識されているEUが、そのアクションに遅れを見せると、国際社会全体のアクションも大幅に遅れるだろう。明確さと迅速な行動は、EUが真剣に気候目標の達成に向けた政策を行っていることを示し、世界の根本的なシステム課題を解決するために不可欠である。 

  • ミシシッピ川は、ミズーリ州からアーカンソー州にかけて史上最低の水位となっており、穀物やその他商品の重要な輸送に支障をきたしている。    
  • 低水位は、繁忙期における貨物輸送を妨げ、物流のために川を使用するさまざまな産業と供給チェーンに影響を及ぼしている。    
  • この状況は、ミシシッピ川のような重要なインフラが極端な気象事象や気候関連の課題に対して脆弱であることを強調している。   
  • 低水位の影響に対処し、変化する気象条件に適応するための対策と投資は、この重要な輸送ルートの信頼性を維持するために不可欠だ。

詳しくは: ABC News, USA Today

Codoのコメント:  米国の輸送システムの「背骨」と称されるミシシッピ川に関するこの事例は、インドの穀物輸出制限の要因となった貧弱な稲作システムと同様に、気候変動の現実的かつ急激に変化する気候変動の影響を示し、警鐘を鳴らしている。ミシシッピ川は、歴史的にも重要であり貨物輸送にとって不可欠なインフラであるため、歴史的に低い水位は便宜的な問題だけでなく、危機と言えるだろう。海水が川を覆い始めたことで侵入生物による生態系被害の影響が出始めており、また、塩水に対応していないインフラを脅かしている。気候変動はますます不安定な気象パターンと出来事を引き起こしているが、これらは単なる一時の混乱ではなく、何百万人もの生活を脅かすのだ。   

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