ウイークリーニュース | 2023年10月15日~31日

Codo Advisory は、世界と日本の気候変動対策や企業のサステナビリティに関する最新のイベントやトレンドをお伝えしております。直近の注目ニュースをまとめてご紹介いたします。

  • 2021年に初めてエネルギー産業におけるネットゼロ排出目標に向けた道筋を発表していたIEAは、9月末に更新版のシナリオを公表した。 
  • クリーンエネルギーの活用が増えることにより、世界のCO2排出量はこの10年でピークを迎えると予想されている。太陽光発電設備の増加や電気自動車の販売増加など、ポジティブな進展もある。イノベーションによって既に新たな技術が提供されているが、地球温暖化対策を迅速に進めるためには更なるイノベーションが必要だ。 
  • クリーンエネルギーへの移行だけでなく、電化の促進とエネルギー産業におけるメタン排出の75%削減が2030年までに必要だ。IEAは、炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)、水素および水素ベースの燃料、持続可能なバイオエネルギーがネットゼロ排出達成に重要と予測している。2030年までに急速な進展が求められる。 
  • 2023年にクリーンエネルギーへの世界投資額が過去最高の1.8兆ドルに達する見込みだが、2030年代初頭までに年間約4.5兆ドルへと増加する必要がある。 
  • 詳細はこちらの記事をご覧ください: IEA

Codoのコメント: 気候変動の解決に向けた取り組みは、時に、あまりにも野心的で、実現に向けた道のりの遠さに圧倒されるが、IEAの最新レポートは大いに希望を抱かせるものだ。科学とイノベーションへの投資が成果を上げ始めている。今こそ、それらを活用するために行動を起こす時だ。IEAは、気候変動への取り組みにおける財政の中心的な役割と、2050年までにネットゼロを達成する可能性を強調している。また、途上国では実施にあたっての課題が多く、公正な移行が一層求められる。 

  • 日本とデンマークは、気候変動に対抗するため、浮体式洋上風力発電技術に関する協力を目指し、意向書に署名した。 
  • 両国は協力の枠組みを構築。そこに他国を参加させ、最終的には世界的な産業標準を確立する計画だ。 
  • 日本は、2050年のカーボンニュートラル実現を宣言しており、そのために2030年までに10ギガワット(GW)の洋上風力発電を導入する目標を掲げている。 
  • また、両国は水素とアンモニアの持続可能なサプライチェーンを開発するための覚書にも署名した。 
  • 詳細はこちらの記事をご覧ください: Nikkei Asia, Reuters

浮体式洋上風力発電技術に関する協力は、世界の炭素排出削減目標の達成において重要な進展である。浮体式であることから、深い海域でも設置が可能で、今後世界的にも導入が増える見通しである。協力の枠組みを構築し、世界的な産業標準を確立することで、日本とデンマークは自らの再生可能エネルギーの未来を確保するだけでなく、他国にもその輪を広げている。国際的なパートナーシップは、技術の進歩を促進し、エネルギープロバイダーが再生可能エネルギークレジット(RECs)を保有することを可能にする。これにより、供給されるエネルギーが再生可能(ゼロ排出)源となり、炭素排出と化石燃料への依存を削減することに繋がる。また、この合意は、日本がより先進的なEUの国と共同で取り組む良い機会とも言える。ただし、浮体式洋上風車は様々な理由で常に論争の的となっている。一部の人々は、海岸の景観が悪化するとして懸念を抱いている。しかし、それ以上に海洋環境や生態系への大きな影響、そして漁業やレクリエーションなどの経済活動への影響も懸念されている。 化石燃料への依存度が減ることは好ましいが、エネルギー源や性質に関係なく、エネルギーの使用まで含め、私たちがどのようにエネルギーと関わっていくのかというシステム全体の再構築を行う必要があるだろう。 

  • 大災害債券(CATボンド)は、保険会社が高い利率で発行する債務証券であり、特定の災害(山火事、ハリケーン、洪水など)が発生した場合にのみ(販売した保険会社に利益をもたらす形で)支払いが行われる。 
  • 大災害債券市場は現在、他の債券市場を上回るリターンをもたらし、最も好調な債券クラスの1つだ。 
  • 世界銀行は、次の5年間に大災害債券の既発債を10億ドルから50億ドルに増やす計画であり、市場価値が約400億ドルと評価される市場の成長に貢献する。 
  • 大災害債券は高いリターンをもたらすことから人気を集めており、近年増加中の気象イベントに関連する保険市場のリスクを投資家が引き受ける手段となっている。 
  • 世界銀行は、これまで対象範囲であったハリケーン、パンデミック、地震に加えて、洪水や干ばつ等の物理的な災害についても大災害債券の対象となるよう範囲を拡大する意向だ。これにより自然災害リスクに対する保険が不足しがちな途上国に対して、保険不足の状況を改善するとともに、自然災害が発生した際に速やかに財務支援を実施できる仕組みの構築を目指している。 
  • 詳細はこちらの記事をご覧ください: Bloomberg Green, Markets Insider 

Codoのコメント: 大災害債券は、かつてはニッチな市場だったが、今では気候危機における金融の指標となっている。大災害債券は、保険会社が災害が発生することに賭ける形で構築されており、気候変動によって極端な気象イベントが頻繁かつ激しいものになることで、より多くの保険会社がリスクの増加を相殺するためにこれらの債券を発行している。高いリターンは、投資家を引き寄せ、2022年には伝統的な債券クラスを上回る成績を収めた。大災害債券にも一定のリスクはあるが、株式などを主とする伝統的な投資ポートフォリオとの相関関係がないため、投資の多様化を可能にする。COP28などの気候会議では、これらの債券が気候変動による災害に対して脆弱な国々を保護するための資金調達における重要な役割を認識している。大災害債券の急増は、気候変動の厳しい現実とその緊急性を反映している。気候危機が加速し、金融界と融合する中で、大災害債券の活用は気候危機対策において重要な柱となることだろう。 

  • ヨーロッパ連合(EU)は、さまざまな製品に使用されるプラスチック製ペレットを対象とした取り締まり強化の方針を示しており、マイクロプラスチック汚染を74%削減する計画を立てている。 
  • プラスチック製ペレットは、マイクロプラスチックに分解されると健康リスクを引き起こす。EUは、事業者に対し流出の防止と、必要に応じた封じ込み施策や清掃の徹底を行うよう求めている。 
  • 方針案には、強制力を持つケースとベストプラクティスが含まれており、小規模事業者には緩やかな規制が適用される。 
  • もし対策が取られないままであれば、2040年までに世界のマイクロプラスチック汚染は2倍になる可能性がある。EUにおける取り締まり強化は分岐点となるだろう。 
  • 詳細はこちらの記事をご覧ください: The Guardian, Reuters

Codoのコメント: マイクロプラスチックは、環境に浸透し、生態系を乱し、水生生物に害を与える微小なプラスチックの残留物であり、人間社会や公衆衛生と複雑に関わっている。最近の研究では、母乳の中にマイクロプラスチックが検出されるなど、対策の必要性が強調されている。マイクロプラスチックに関連する危険性に対する意識と理解の拡大は、1970年代や1980年代に起こったハイドロフルオロカーボンに関する理解と対応を思い起こさせる。マイクロプラスチックによる人類の健康や環境への影響についてはまだ完全には理解されていないものの、EUによるマイクロプラスチック汚染防止に対する姿勢は人間の福祉と生物多様性を保護するための重要な一歩と言えるだろう。 

また、国内の取り締まり強化は重要だが、マイクロプラスチック汚染の広範に広がる影響に対処するためには、グローバルな協力が不可欠だ。現時点ではEUによる措置が輸入品や経済活動にどのような影響を与えるのかは明確ではない。当該規制の影響や効果について一定の疑問は残るが、新興脅威に対処するEUの積極的なアプローチは称賛されるべきだ。ただし、十分な投資支援がないまま急激な規制変更を行うことは注意が必要だ。 

Codo Advisoryのニュースレターにご登録いただいた方へ定期的に情報をお届けします。

登録中…
ご登録ありがとうございます!

Related Posts