フランスとEUによるファッション規制強化と、その先にある影響


ベノア・モルガン | コンサルタント

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ウルトラファストファッションは長年、規制の空白地帯で成長を続けてきた。品質や廃棄の問題を顧みることなく、毎週何千もの新作を大量に生み出すビジネスモデルだが、フランスは2024年、この流れに歯止めをかけるべく法案を提出した。それから2年、この法律はすでに施行され、さらにEU全体の対応を通じて、企業のあり方そのものを変えつつある。今回のCodo Insightsでは、フランスの新たなウルトラファストファッション規制の内容、EUによるサステナブルファッションへの取り組み、そして日本が同様の課題にどう向き合っているかを解説する。

フランスの「ファストファッション対策法」の詳細

2024年に投稿した記事では、当時まだ法案段階だった3つの主要施策を取り上げた。

  • ファストファッションの経済、社会、健康、環境影響に関するメッセージを、該当業者のウェブサイト上で商品購入が可能な全ページの小売価格の横に表示
  • 2025年から5ユーロ、2030年までに10ユーロまたは商品の小売価格の50%が課される。本制度を通じて集められた資金は、EU域外のリサイクル施設への資金提供や、EU規制を遵守する企業を優遇するために使われる。
  • ファストファッション小売業者に対する広告(インフルエンサーによるプロモーションを含む)の禁止

これら3つの施策はいずれも、一部調整を加えたうえで採択された。

このうち最初に施行されたのが、課徴金(エコペナルティ)である。2026年9月1日から適用が始まった。すべての衣料品には、企業が市場に投入する数量と、修理を促す取り組みへの投資度合いに応じたスコアが付与される。

2024年当初案は一律5ユーロ(2030年に10ユーロまたは販売価格の50%)だったが、現行制度では品目ごとに金額が異なり、より緩やかに段階を踏んで引き上げられる(ただし上限50%は維持)。エコスコアが基準を下回るシャツの場合、2026年時点で6ユーロ、2030年には8.25ユーロの課徴金が課される。コートの場合は2026年に12ユーロからスタートし、2030年には19.50ユーロに達する。徴収額はすべて、フランス政府が指定する繊維製品向けエコ団体「Refashion」に納められる。

図1:フランス品目別エコペナルティ料金表(2026年9月1日から)(ユーロ)
出典: Legifrance (フランス語のみ)

この課徴金はKiabi、Decathlon、Zara、H&Mといったフランス・EU域内の実店舗小売業者には適用されない。セルジュ・パパン仏商業・中小企業担当大臣はインタビューでこの区別について、「責任を問うことができる企業」と「規制逃れを事業モデルの根幹に据え、制裁にしか反応しない事業者」との間には明確な違いがあると説明している。同大臣はさらに、欧州のブランドは実店舗を持ち、雇用を生み、実店舗経営に伴う税金を納めており、これは本質的に異なるケースだと付け加えた。

これは、EU域内の小売業者が将来的に対象外であり続けることを意味するわけではないが、Shein、Temu、AliExpressなどが最初に対応を迫られる対象であることは明確だ。

残りの施策は、来年初頭に施行される予定である。オンライン小売業者には以下が義務付けられる。

  • 節度ある消費、再利用、修理、リサイクルを促すメッセージの表示
  • 各製品の社会的影響の開示
  • 環境・公衆衛生への影響に関する注意喚起
  • 選択した配送方法の環境負荷に関する情報提供
  • オンラインで販売される製品の製造国の表示

これらの表示は、明瞭かつ判読可能で、消費者が購入手続きの際に見逃すことがないよう価格表示と同等以上のフォントサイズで、価格のすぐ隣に配置される必要がある。

これとは別に、この法律はイベント協賛、映画への製品配置、インフルエンサーによる宣伝を含む、直接・間接を問わない広告をウルトラファストファッションブランドに対して全面的に禁止している。これはおそらく、実際の運用において最も執行が難しい施策だ。オンライン広告や動画プラットフォーム上でのインフルエンサー宣伝は、法的にグレーゾーンにある。海外映画にウルトラファストファッションブランドが登場した場合、この禁止はどう適用されるのか。海外インフルエンサーによるShein購入動画は、何らかのフィルタリング機構によってフランス国内での視聴がブロックされるのか。執行の仕組みが今後どう形作られるか、注視すべきポイントである。

フランス人の衣料品購入、史上最多に

ウルトラファストファッションの市場浸透によってフランスのファッションブランドが経営危機に陥っている。

こうした新規制が導入される一方で、消費者の行動はまだ大きくは変化していない点にも留意が必要だ。Sheinは2024年に米国を抜いて欧州を最大市場とし、欧州での売上は2025年に148億ドルまで伸長、これは同社の総純売上高の35.4%を占める。フランス国内に限ると、ウルトラファストファッション関連の売上は2025年に12%増加した。同年、フランス国民が購入した新品衣料品は36億点に上り、2024年の過去最高記録である35億点を更新している。これは1人当たり、新しい衣料品43点、靴4足、リネン類12点に相当する。

図2:2025年フランスアパレル市場の販売業態別市場規模(2024年比)
出典: Refashion (フランス語のみ)

消費者は、注文ごとに数ユーロ余計に払うだけで済ませるのか、それとも買い物の仕方そのものを見直すのか。安価な洋服が毎日のように市場にあふれる中、地元ブランドはますます太刀打ちできなくなっている。とりわけフランスのブランドは、オンライン専業の新興勢力の台頭で大きな打撃を受けてきた。Camaïeu、Jennyfer、Naf Naf、Kaporal、IKKSなどが次々と経営破綻や消滅に追い込まれ、実店舗と雇用も道連れとなった。

EUが輸入と廃棄の両面からウルトラファストファッションを締め付ける

エコペナルティに加え、フランスはウルトラファストファッション輸入品を抑制するもう一つの手段として、「Taxe sur les petits colis(小口貨物税)」を導入していた。2026年3月1日より、フランスはEU域外から届く150ユーロ未満の全ての小口貨物に対し、品目カテゴリーごとに2ユーロを課税した。150ユーロという線引きは、それを超えると通常の関税が適用される水準である。制度としては単純明快だったが、実際にはすぐに実効性を失った。ファストファッション各社は単純にサプライチェーンを迂回させ、貨物便をフランスではなくベルギーやオランダに着陸させたうえで、単一市場内では自由に移動できることを利用して、トラックで陸路フランスへ運び込んだのである。

ただし、この課税は本来、税収そのものよりも、EU全体での対応を促すことを狙ったものだった。2026年7月1日、EU独自の措置が導入されるのに合わせて、この小口貨物税は停止された。新たな措置は、150ユーロ以下の小口貨物に対し品目カテゴリーごとに一律3ユーロを課す関税で、さらに2026年11月1日前後には「連合取扱手数料(Union Handling Fee)」が上乗せされる予定である。両施策は、2028年に稼働開始予定のEU税関データハブが整うまでの、いわば繋ぎの措置と位置付けられている。欧州委員会は両手数料について次のように説明している。「関税は、eコマース事業者が現在享受している競争上の優位性を解消するものであり、取扱手数料は、膨大な貨物量を監督するために税関当局が負担している増大するコストを補うものである」。

2026年8月27日、フランスのロラン・ルスキュール経済大臣は、7月の措置導入以降、小口貨物の件数が30〜40%減少したと発表した。貨物件数の減少自体は、税関業務の負担軽減にも、輸送に伴う環境負荷の軽減にも資するものだが、ファストファッション事業者が新たな抜け道を見つけるのも時間の問題だろう。例えば、EU域内に一括で大量輸入したうえで、域内で小口貨物に分けて配送するといった手法である。

小口貨物税だけが、EUが用いている手段ではない。2026年7月19日以降、EU域内の大企業は「エコデザイン規則(ESPR:Ecodesign for Sustainable Products Regulation)」のもと、未販売の衣料品、アクセサリー、履物の廃棄が禁止されている。これもまた、ファストファッションに長く付随してきた慣行——使用可能な在庫が再販売、寄付、リサイクルされることなく、焼却または埋め立て処分される——を狙い撃ちにした規制だ。中堅企業には2030年までの猶予期間が設けられ、安全上のリコールや破損品については例外が認められているが、大手小売業者にとっては、もはや単なる経営判断ではなく、コンプライアンス上の義務となっている。繊維製品に関するESPR委任法令の全体像は2027年第4四半期に採択される予定で、さらに踏み込んだエコデザイン要件と、衣料品の素材や原産地を追跡する「デジタル製品パスポート(Digital Product Passport)」の導入が盛り込まれる見込みである。

つまり、小口貨物税と廃棄禁止は、あくまで序盤の一手に過ぎない。ブリュッセルが狙っているのは、ファストファッションのビジネスモデルを、安価な輸入という入口と、売れ残りの廃棄という出口の両方から締め付けることである。

ESPRの規則は、生産地を問わず、EU市場に投入されるすべての製品に適用される。日本企業を含む欧州で事業を展開するあらゆるファッション企業にとって、これはビジネスモデルそのものの根本的な見直しを迫られることを意味するかもしれない。

日本のアクションプラン:拘束力のある規制はまだない

これと並行して、日本もまた独自のサステナブルファッション政策を推進しているが、EUに一歩遅れをとっているのが実情である。2026年3月24日、環境省は「サステナブルファッションの推進に向けたアクションプラン」を公表し、家庭から廃棄される衣類の量を2030年度までに2020年度比で25%削減する目標を掲げた。これはおよそ13万トンの削減に相当する。

図 3:サステナブルファッションの推進に向けたアクションプラン(概要)
出典: 環境省

このプランは、以下の4つの柱で構成されている。

  • 「全国どこでも分けて出せる」:行政回収の質と量の向上、民間回収の全国展開、マッピング等による回収拠点の見える化、再資源化量増加に向けたプロジェクト支援や新たな再資源化手法に関する調査・検討。
  • 「使えるものは譲る」:リユース等の促進に関する既存のロードマップに沿った施策の推進。
  •  「使えるものは長く使う」:衣類を長く大切に使う機運の醸成と、生活者の行動変容を促す取り組み。
  • 「長く使えて資源を循環しやすくする」:唯一、製造側を対象とした柱で、環境配慮製品の販売促進や、需要創出につながる環境整備を目指す。

これらの施策には一定の意義があるものの、4つの柱のうち3つは「購入後」に焦点を当てたものであり、製品の設計・製造段階に踏み込んでいるのは4つ目の柱だけだ。このプランはウルトラファストファッションを「使えるものを長く使う」ことを阻む要因として名指ししているものの、対応策は啓発イベントやキャンペーン、教育にとどまっており、EUが導入しているような拘束力のある規制とは、ほど遠い内容である。

ユニクロをはじめとする日本の大手ファッション企業が、EUの要件を満たすために製品設計やサプライチェーンの見直しを迫られる中、こうして生まれるより耐久性の高い製品が、そのまま日本国内向けの標準仕様となり、日本国内のサステナビリティの取り組みを後押しする可能性は十分にある。一方で、拘束力のある規制や罰則がない以上、Sheinのようなウルトラファストファッション業者には日本市場向けに製品を改善する理由がなく、これがかえって「底辺への競争」を加速させかねない。

フランス・EUの新規制の中、企業ができること

EUおよびフランスにおける規制強化が今後も続く中、企業が備えておくべき具体的な対応として、以下が挙げられる。

  • 製品設計の見直し:ESPRの要件は、素材や製造工程の見直しを迫るものだ。この規制はアパレルに限らず、家具や鉄鋼など環境負荷の大きい分野を優先的に対象としている点にも留意が必要である。取り扱う製品を問わず、EU市場で事業を行う企業は、規制動向を継続的に注視すべきだろう。
  • トレーサビリティの整備を先行させる:デジタル製品パスポートでは、素材、原産地、サプライチェーンに関するデータが求められる。今のうちにこうしたデータ基盤を整備しておくことで、後になって慌てて対応する事態を避けられるうえ、EU規制対応にとどまらない広い用途にも役立つ。これは最終販売者から素材メーカーまで、サプライチェーンに関わるすべての企業に言えることだ:備えができているかどうかが、選ばれる企業になれるかの分かれ目になるかもしれない。
  • 必要に応じて、小口貨物輸出からの脱却を図る:EU向けにB2C直送を行う企業は、規模の大小を問わず、関税や新設される取扱手数料の対象となる。EU域内での倉庫整備や、EUの物流事業者との提携を通じて流通を現地化することで、こうしたリスクを回避できるが、その分のコスト増も伴う。

まとめ

これらの施策を総合すると、ファストファッションが「規制されないビジネスモデル」から「規制の対象」へと明確に位置づけを変えつつあることが分かる。フランスのエコペナルティと小口貨物税、EUの関税と廃棄禁止、そして2027年までに導入予定のエコデザイン要件——これらはすべて同じ方向を指し示している。すなわち、輸入・廃棄・広告のあらゆる側面から、ウルトラファストファッションのビジネスモデルを締め付けるという方向性だ。こうした規制が実際に消費者の行動を変えるかどうかは、依然として未知数である。ただ、企業に向けたメッセージは明確だ。これは一時的な保護主義の波ではなく、ファッション業界にとどまらず、業種を問わず今後も段階的に強化されていく、より大きな欧州の潮流の第一段階に過ぎないということである。企業にとって賢明な選択は、規制の運用実態を静観することではなく、コンプライアンスへの備えそのものを競争力の問題として捉えることだと言えるだろう。


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