要点
- 2つの要点:再生可能エネルギーと安全な原子力発電
- 原子力は、安全であるならば再び検討の対象になり得る。
- 再生可能エネルギーは61%増加させる必要があるが、それでも総発電kWhでは多くのOECD諸国に劣る。
- フレキシブル・ソーラーパネルと洋上風力発電は投資対象として現在最も注目されている。
- 送電網への投資も進んでおり、2050年には大規模な地域間連携線等が予定されている。
- 水素は依然として金の卵だが、アンモニアに関する話題は昨年と比較すると減少した。
- GX経済移行債への投資フローは準備が整っている。
- ついにカーボンプライシングが始動!化石燃料は2028年から課税され、一般取引は2033年に開始される。
エネルギー計画の背景
日本はジレンマに直面している。15年前、日本が世界で最も安全な原子力発電の推進者だった頃、日本はパリ協定が2050年ネットゼロを目標にすることを各国に求めるずっと前から、野心的な排出削減目標を掲げて世界をリードしてきた。1しかし、その宣言からわずか1年足らずで、原子力発電の拡大、つまり日本で最も実現可能なカーボンニュートラルなエネルギー源の拡大は撤回された。しかし、様々な投資と送電網の不安定化への懸念が何年も続き、日本の再生可能エネルギー構成は他の先進国に遅れをとっている。2050年の目標を達成するためには、日本は今、的を絞った投資を行う必要がある。これらの投資は、新たに発行されたGX経済移行債スキームによって賄われ、経済産業省によって概説された包括的なGXエネルギー計画によって形作られる。革新的な自然エネルギー、安全な原子力発電への回帰、大規模な送電網と貯蔵インフラの整備は、段階的なカーボンプライシングの義務化を通じて捻出された資金で賄われる。
日本のエネルギーの歴史は長い間、安定的な供給源を求める闘争の歴史であった。日本のある派閥は、日本が第二次世界大戦に参加したのも、真珠湾を爆撃したのも、石油への切迫的な需要からだったと主張している。戦後になると、日本はこの長い間悩まされ続けてきた問題の解決策を見つけた、原子力発電だ。これにより日本は、国内生産によって需要に見合ったエネルギー供給を行えるようになったのだ。しかしすべてが変わったのは、2011年3月11日に、巨大地震と津波による壊滅的な被害が引き起こされ、福島原発1号機が故障した日だ。日本は急速に原子力発電から手を引き、石油や石炭を燃料とする火力発電へと舵を切った。将来の排出量目標よりも目下の需要を優先させた結果であった。しかし、目下の需要が十分に満たされた後でも、日本は震災後に設定された道を歩み続けた。同時に、日本は長期的な信頼性獲得のためにLNG社会のパイオニアとなった。
太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、大部分を占める化石燃料による熱発電から得られるエネルギーを補完するものとして扱われた。太陽光や再生可能エネルギーの導入を促進するために、低炭素エネルギーの買取価格を保証する制度(固定価格買取制度、FIT)が導入され、その後拡大されたが、電力系統全体の安定性を守るために発電したエネルギーを電力系統に売電できる量には上限が設けられた。日本は、震災を自然エネルギーを最大限に統合した真に「スマート」な送電網を開拓する機会として活用するのではなく、化石燃料等の自然エネルギーで補うという安全・安心を優先したのである。そのため震災から13年経った現在でも、日本は再生可能エネルギーによるエネルギー需要の割合において、パキスタン、チェコ、中国などに次いで41位にとどまっている。2 議論を呼んでいるバイオエネルギーや水力発電を除くと、順位はさらに下がる。日本は脱炭素化目標に向けて大きく前進するどころか、エネルギー需要のわずか11%しか自給できていない状態に陥っている。
福島県全域を放射能汚染に苦しめた3.11の震災から13年経った今、世界的な地政学的変化により、エネルギー自給が最優先課題となっている。ロシアがウクライナに侵攻したとき、日本は自国のエネルギー供給網の脆弱さを痛感した。これを受けて、日本政府はメッセージを転換した。洋上風力発電やペロブスカイト太陽電池発電のような革新的な自然エネルギーの開発・普及を支援することに加え、日本は原子力発電を回避する姿勢から、安全に使用するという注意書きを添えた上で、原子力発電を活用する姿勢へと転換している。
エネルギー計画の概要
日本の総エネルギー需要と比較した再生可能エネルギー供給量は、他の先進国に比べて低いままであるが、2021年・2022年に段階的に廃止されたFIT政策により、従来の自然エネルギー(陸上太陽光発電、風力発電)を開発しやすい用地の多くは活用されてきた。残っている伝統的自然エネルギー用地は、地元の反対、地理的困難(非常に険しい、森林に覆われた山腹)、エネルギー発電効率の悪さ(多くの場合、日陰になるなど)などによる開発障壁を抱えている。そのため政府は、ペロブスカイト太陽電池や洋上風力タービンなどの技術開発に投資することで、再生可能エネルギー発電を増やし続ける意向である。全体として、日本政府は2030年までにエネルギーミックス(電源構成)に占める再生可能エネルギーの割合を2倍以上にする意向である。(図1)
ペロブスカイト太陽電池は、日本発の新技術である。日本政府は、パネルの軽量性・可鍛性を利用して、建物の壁や日よけなど、現在一般的に使用されている硬くて重い太陽光発電パネルでは対応不可だった場所から太陽エネルギーを利用したいと考えている。日本は後継技術を提示することで、グリーン産業の製造における中国の優位性への挑戦も試みている。
再生可能エネルギー供給の伸びは、国のカーボン・ニュートラル誓約だけでなく、公共エネルギー供給のコストと炭素依存を軽減したいという官民セクターからの要求によっても拍車がかかっている。しかし、電力供給は需要と供給の複雑なバランスの上に成り立っている。再生可能エネルギーは、日中の光や風の強さによって自然変動する。長年にわたり、この変動が送電網全体を混乱させる恐れがあったため、一定の値を超える再生可能エネルギー電力への依存には消極的だった。変動性を緩和するため、経済産業省は蓄電と輸送、水素エコシステム、送電網の全てに投資している。
主要な要素の分析
今後更に多様化する電力供給を管理するため、大規模な送電網の見直しが発表された。北海道は再生可能エネルギーの主要ハブとして、巨大な海底ケーブルを通じて本州の送電網に接続される予定だ。供給が多い時間帯にエネルギー使用を最適化するためのインセンティブは、デマンドレスポンスと料金システムを通じて提供される。全体として7兆円の予算が組まれ、2050年までに完成する予定である。
2050年に計画されている送電網の高度化(図2)

Source: 広域系統長期方針(広域連系系統のマスタープラン)
送電網に関する輸送・利用側への投資に加え、日本は蓄電オプションにも投資する。日本は、水素やアンモニアやe-methane(イーメタン)などの水素キャリア燃料という形で出現しつつあるエネルギー貯蔵に特に注目している。多くの技術的・物流的課題が残っているとはいえ、水素やその他のキャリア燃料は、エネルギー貯蔵と、鉄鋼のような脱炭素化が困難な産業の高品質熱需要の両方にとって、低炭素強度の代替手段を提供する。この二重の応用可能性により、水素は今後ますます重要な分野となると予想される。
これらの投資はすべて、日本政府が今年2月から発行する20兆円のGX移行債を通じて行われる。このレベルの資金調達は、民間部門が同様の対象となるグリーン投資に総額150兆円を投資するよう促すことを意図している。経済産業省は、カーボンプライシングを段階的に導入することで、投資にさらなるインセンティブを与え、自ら発行した債券を返済する計画だ。自主的な排出量取引制度(ETS)は2023年4月に開始され、ロジスティクスの手法を改良・開発している。ETSへの参加は、企業がGX移行債からの資金調達の一部を賄うことを可能にする。この制度は化石燃料を輸入する企業に対して2028年度から燃料ごとの排出量に応じた賦課金の支払いを求める方針へと移行する。炭素排出ポテンシャルに課税することで、排出量の多い化石燃料への依存を減らす必要性が高まる。2033年には、取引がすべての業種に拡大される。
成長志向型カーボンプライシング構想(図3)

Source: Japan Climate Transition Framework
今後のインサイト記事では、GX債の発行と、企業がどのようにこれらの投資を利用できるかについて取り扱う。
用語解説
- GX(グリーントランスフォーメーション):化石燃料からの脱却を目指し、クリーンなエネルギー源へのシフトを表現するために使用する略語。
- GX経済移行債:日本政府が脱炭素活動に向けた資金調達手段として発行する国債。
- フレキシブル・ソーラー(ペロブスカイト太陽電池):従来とは異なり、非常に柔軟性の高い素材を用いて製造された太陽光パネル。
- エネルギーミックス:特定の地域や国がエネルギーを供給するために利用するエネルギー源の組み合わせのこと。
- デマンドレスポンス:電力の需要量を供給量に合わせること。供給量を一定にし、発電量に対する無駄を減らすことで資源の浪費を減らす狙いがある。
- 水素キャリア燃料:水素を容易に輸送するために輸送時のみ別の物質に変換する方法。その変換先燃料を指す場合もある。一般的な例としては、アンモニア、電子メタン、液体有機水素化合物(LOHC)などがある。
取り上げてほしい話題について教えてください!
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- https://japan.kantei.go.jp/hatoyama/statement/200909/ehat_0922_e.html ↩︎
- Energy Institute – Statistical Review of World Energy (2023) (注: 再生可能エネルギーには、水力、太陽光、風力、地熱、波力、潮力、およびバイオエネルギーが含まれますが、バイオ燃料は含まれません。) ↩︎


