インタビュー | 田んぼソムリエ 林 鷹央氏

日本の田んぼには、さまざまな生きものが暮らしています。その生態系の魅力を伝え、守る活動を続けているのが「田んぼソムリエ」林 鷹央氏です。もともとはデザイナーとして活躍していましたが、メダカの絶滅危機をきっかけに田んぼの生物多様性に関心を持ち、本格的に取り組むようになりました。以来20年以上にわたり、農業と自然環境保全を結びつける活動を続け、「加点式生きもの認証」などの独自の取り組みも進めています。本インタビューでは、林氏が「田んぼソムリエ」として歩んできた道のりや、生物多様性への思い、そして未来への展望についてお話を伺いました。


田んぼソムリエになるまで

ベノア:本日はお時間をいただき、まことにありがとうございます。林氏のウェブサイトを拝見すると、まず目に飛び込んでくるのが「田んぼソムリエ」という肩書きですよね。このユニークな肩書きを名乗るようになった経緯について、お聞かせいただけますか?

林氏:まず「田んぼソムリエ」と名乗る前なのですが、農業のような二次的自然の保全(原生林ではなく、里山や田んぼなど、人が生態系の一員として関わり維持されている自然)をフィールドにしている職業が無かったので「自然再生・保全活動家」とCOP10(第10回生物多様性条約締約国会議)の頃までは名刺の肩書きに書いていました。今で言うところのリジェネラティブ(Regenerative=自然環境再生)ですね。2011年の東日本大震災後「Bioアナリスト」声無き声を伝える生命の代弁者・メッセンジャーという意味です。「Bioアナリスト養成講座」は200人ほど修了者がいましたが、当時「バイオハザード」というゲームが流行っており、日本では「Bio=ビオ」という文字が敬遠され弟子たちからも不評でした。2016年に著書「田んぼソムリエになる/安心農業」を出したのを機に「田んぼソムリエ」名乗るようになりました。

「生きもの調査と里山ハーブで 田んぼソムリエになる!」/ 林 鷹央 (出版社:安心農業)

ベノア:なるほどですね。実際、 小さい頃から自然や田んぼに興味をお持ちだったのですか?

林氏: 幼少の頃は恐竜や昆虫、動物などの本を読み、夏休みになると両親の実家がある千葉県と三重県の田んぼや雑木林で水生昆虫やカブトムシ、クワガタムシ探しをしていました。両親が芸大、美大出身のデザイナーだった影響で、秋〜春は絵ばかり描いていました。10歳過ぎたあたりで両親が離婚し、私の興味は自分に心の居どころをくれたロックミュージックと格闘技になっていました。しかし絵が得意だったので美術大学に進学しました。大学では格闘技サークルの部長を務め、シュートボクシングの全国大会で準優勝したこともあります。とにかくお客さんを沸かせるのが好きで、承認欲求が満たされる気がしたのでしょうね。ちなみに大学院時代の格闘技映像はYouTubeで39万回超再生を記録しているものもあります笑。

ベノア:美大に格闘技……「生物多様性」とは程遠い道のりに見えますが、どうやって自然とまた近くなったのでしょうか?

土水路のメダカ(写真:林 鷹央)

林氏:卒業後はグラフィックデザイナーや広告代理店のアートディレクターをしていました。そんな中「メダカが絶滅危惧種になった」というニュースに衝撃をうけたのです。野生のメダカはペットショップで売られることすらない、どこにでもいる田んぼや小川の魚でした。それが絶滅危惧種って世の中で何が起きているのだ?当たり前がなくなることが一番怖いと直感し、生態系保全の世界に飛び込んだのです。考えてみてください。今吸っている当たり前の空気がなかったら死にます。水がなくなっても、食料がなくなっても長くは生きられません。それが当たり前だったメダカが居なくなる違和感であり怖さです。

ベノア:「6回目の生物大量絶滅」を感じさせる出来事ですね。それが、デザイナーから生物多様性の世界へ転身するきっかけになったのでしょうか?

林氏: 日本にビオトープという概念を持ち込んだ財団法人日本生態系協会に転職しました。業界転職は困難でチャレンジ一年目は書類選考で落とされ、翌年補欠で入れてもらいました。年間千人も応募があるくらい人気だったらしく、周りは名だたる国立大学や理系大学出身者、または現場経験者ばかり。私はフィールドワークをしたかったのですが、美大出身ということで編集担当になってしまいました。デザインを捨てて出直してきたのに、またデザイン??って(笑)。でも生物多様性の基礎や自然再生の可能性、国内・海外の事例など多くの宝物を授けてくれました。

ベノア:日本には4,000以上の自然保護団体がありますが、その中でなぜ日本生態系協会を選んだのですか?

林氏:数ある自然保護団体の中で私が生態系協会にこだわったのは、単なる生物種の保護ではなく、エコシステム(生態系)という自立した野生を奪わないバランス感覚。ビオトープ、自然環境再生やミティゲーションといったネイチャーポジティブの概念をいち早く取り入れていたこと。生物多様性を軸としたグランドデザインもこの頃に強く意識しました。アメリカやドイツの自然再生事業、キューバや宮崎県綾町の有機農業事例の勉強会があったり。2003年の頃に人と自然が共生していくというビジョンが私の中にはっきりとできました。

そんな中、どこに力を入れていけばより多くの生きものたちを輝かせられるのだろうか?と考えていた時、「日本の絶滅危惧種の50%は田んぼ・里山の生きものたち」という内容の特集記事でイラストを担当しました。今見返すと当時まで田んぼや森林などランドスケープをしっかり観察したことが無かったので酷い出来です。でも「人間は生きものたちを虐めるだけではなく、豊かにすることもできるんだ!」と目覚めさせてくれたイラストなので、恥ずかしいけど載せます。

林氏が自然保護団体時代に描いたさとやまと生きものの絵(2003年作)

林氏:その後、「田んぼの生きもの調査」を主とするNPO法人メダカのがっこうに入ります。

ベノア:以前お話しした際、最初は自然保護活動の収入だけでは生活が厳しかったと伺いましたが、この時期はどうでしたか?

林氏:デザイナーから自然保護分野に転職をすると、年収がガタッと下がりますが、さらにNPOとなると半分以下(普通のNPOはボランティアなので月給があるのは破格の扱いではあります)になってしまうので、夜は終電近くまで格闘技やヨガなどのスポーツインストラクターを副業としていました。その経験のおかげで人前で話をしたり、喜んでもらうことに楽しさを感じ、講師や執筆の仕事に役立ちました。体もグッドシェイプになっていたので、モデルを少しやりましたが、大人しくジッとしていられない自分には合わなかったようです。

フィールドは「田んぼ」に特化できました。メダカのがっこうでの1年は大学6年間よりも充実していて2年半後に独立したあともお付き合いが続いており、師と仰いでいます。ここからJA(全農、農協)、生協、教育機関、オーガニック団体、農業団体や環境配慮型の生産者たち。日本各地で生物多様性の講演、農地を中心に年間50〜100回ほどフィールドワークを続けて20年以上になります。

ベノア:20年間で、本当にさまざまな出会いがあったのですね。

林氏:はい、様々な農法の農家さんと話をする機会に恵まれ、彼らの作物づくりのこだわり、地域ごとの景観や食事、ローカル文化やコミュニティー、生態系を複合的に味わっていくことになります。そこから「田んぼ=(里山、ローカル、故郷)」と「ソムリエ=(味わい深さを表現する、違いの分かる人)」を掛け合わせて「田んぼソムリエ」という造語をつくりました。五感プラス量子力学的第六感も使った味わい方。これはまだまだAIにもできないことなので、そこに面白さと希望も感じているのです。


「加点式生きもの認証」について

ベノア:では、現在取り組まれている「加点式生きもの認証」について教えてください。

林氏:〇〇認証というと、認証団体が審査・認証をしてクオリティーを証明するマークをつけるイメージ。第三者認証、権威のお墨付きをもらうというと分かりやすいかと思います。マークだけ見て安心して買えるから脳が疲れない笑。『加点式・生きもの認証』は農家の環境配慮の取組みに対して、“生きものたちが認証”してありがとうの加点評価をします。大きく3つのことを推奨しています。

①食の安心安全の取組み
②生物多様性向上の取組み
③未来への取組み。

農協や企業、販売店の基準。生協のGAP(農業規範)などを否定するものではなく、今まで取組んできた有機認証や減農薬、IPM(総合的病害虫・雑草管理)などの取組みもありがとうの加点対象。またよりローカル色をアピールすることができ、多様な選択肢を広げていきます。少し詳しく説明しましょう。

① 食の安心安全の取組み(有機農業の取組み)

これは従来の有機認証にある化学農薬や化学肥料を使用しないことを強調するのではなく、有機の語源となっている「自然の摂理」に寄り添ったスローな取組みを推奨しつつ、幅も持たせています。消費者ってそもそも安全な場所にいます。もし応援している農家の作物に病気が出た時、農薬をピンポイントで部分的にだけ適量使用したらどうなのか?それによって被害が最小限にとどまり、周囲に広がるのを防止できる場合もあります。その後に田畑に棲む生きものに影響があったのか?なども気になるところでしょう。白か黒、0か100かではなく、もっと現実に寄り添った視点も共有できたら、消費者と農業の距離も近くなります。フェアトレードや環境問題に対して社会全体の理解度を上げたいのです。

また、空気、水、土、遺伝子を汚さないよう配慮することが、持続可能であり「今だけ金だけ自分だけ」ではない、他の生命や次世代の存在も意識したやり方を推奨しています。これは農業に限ったことではなく、あらゆる産業で求められている大切なことでもあります。

生きもの物調査に使用されている「田んぼの環境診断チェックリスト」の一部

②生物多様性向上の取組み

まずは『生きもの調査』を必須として生産者が農地の大まかな生きものを把握します。続いて、より生態系が豊かにバランスが取れてくる状態になるための工夫など具体的な取組みを加点していきます。棲む場所となる環境配慮型の田んぼやビオトープ、コリドー(野生生物の生息地との間を結ぶ緑の回廊)づくりなどの取組みを加点したり。

③未来への取組み。

農地を使った食農教育、資源の地域循環、勉強会や研修会など、生きものたち、次世代の人たち、今を生きる我々、その礎を築いてきた先人たちへの想い。なにより田んぼのキーストーン種として里山生態系を支えている農家だからできる、スケールの大きな社会貢献を加点していきます。

それぞれの得点を「姓(しょう)」で表し、得点が上がると百姓(ひゃくしょう=農家の総合力をリスペクトした表現)に近づくという遊び心をもった認証なのです。

ベノア::詳しい説明ありがとうございます!現在のアクションだけでなく、未来への取り組みも評価するというのが特徴的ですね。正式に「生きもの認証」はいつから始まったのですか?

林氏:『生きもの認証』は2012年から茨城県笠間市の殺虫剤散布を広範囲でやめた地域視察から始まりました。オーガニックマーケティングや宅配流通(大地を守る会、らでぃっしゅぼーや等)を作り、オーガニックライフスタイルエキスポの設立やプロデュースをしてきた徳江倫明さんが発起人となり、安心農業株式会社(生協GAPなど認証づくりのスペシャリスト。みつばちGAPなども開発)の藤井淳生社長と私が長年にわたって開発してきたものなのです。COP10翌年の2011年に起きた東日本大震災・原発事故の影響もあり、生物多様性には世間は見向きもしてくれない時代でしたが、オーガニック界、GAP界の重鎮が大切さに気付いてくれて、毎年エキスポに出展させてもらうなどして年々経過発表していたプロジェクトです。当初の「もう一つのオーガニック認証」という路線からはかなり変わりましたが、時代に合わせた楽しいものにしたかったのです。


農業と自然の現状と未来について

ベノア:20年前から全国各地で活動されている中で、地域ごとに感じる課題や特徴に違いはありますか?

林氏:共通して見られるのが、荒れた風景、そして水生昆虫が見つけにくくなっていること、山の天辺まで植林したにも関わらず放置された人工林。過疎化や高齢化で、美しかった田舎の風景が荒地や薮になったり、草刈りもしんどいので除草剤を撒いてしまい、夏なのに赤く枯れた畦が続いていたり。さらに近年はソーラーパネルが増えましたね。驚くほど。日本の山林は私有地が多いので、国も管理が上手くいかないという問題もあります。林業も成り立たないとなると土地所有者も管理しきれない。問題だらけなのです。農林水産業が成り立たなくなると国土が荒れてしまうのだなと。

ベノア:それは…悲しいことですね。

静岡県菊川市の棚田(写真:林 鷹央)

林氏: それでもギリギリの中で過疎化に喘ぐ地域の人たちが「棚田」や「ため池」など先人たちがローテクで作った風景を守っている地域が、わずかながらにあります。そういうところにゲンゴロウやタガメなどの昔ながらの水生昆虫が生き残っていたりするのです。そんな素敵な地域と生物多様性を合言葉にプロジェクトを立ち上げ連携したりしています。

ベノア:そこで違いを感じられているということですね。

林氏:そう、違いは、諦めてしまっているか、大変な状況でも故郷の風景や循環社会を守ろうと奮闘している人がいるかどうか。映画マッドマックスの放浪をしている主人公が地域のキーマンと出会って心が熱くなるシーン。そんな感覚がリアルにあります。そういうキーマンは、就業時間後や休日でも地域のことを考えているし、休みの日に東京に来てスーパーやレストランに地元農産物のPRに行ってたり。地域に熱い人がいるから、スローな農作物の出口(販路)ができて、その地域が一般的な大規模モノカルチャーな地域より生物多様性が豊かという。キーマンになる人の地域愛溢れる“行動”が結果的に生物多様性向上に繋がっているというのも目の当たりにしています。

それから地域による気候・風土の違いがあるので、各地に農産物の名人がいたり、都会では知られていない出荷量が少なく地元で消費されている個性的な日本酒をつくる「酒蔵」。有名な酒蔵でも地元でしか飲めない無濾過純米生原酒があったり。方言とか気質とかも様々で、初めて行った地域では相手が怒っているのか?受け入れてくれているのか?戸惑ったり。日本のローカルの多様性には驚かされます。

そういうところからも、一極集中している現代の状況が不自然で、戦国時代並みに地方が個性を出す時代がまたくるのではないか?と良い意味で期待しています。戦争じゃなくて、誇らしく「お国自慢・生物多様性自慢」をする時代がきてほしいです。

ベノア:林氏は、生物多様性をテーマにした講義や実習を大人向けと子供向けで行っていますが、その中で生物多様性に対する姿勢の違いを感じることはありますか?

林氏のワークショップの様子

林氏:感想を聞く限りでは、子どもは好奇心。大人は「子どもの頃好きだったなぁ」など人生の様々な想いがよぎりながら再び自然や生命に眼差しを注いでいます。「生きもの目線」になれるような講義・フィールドワークを心がけていて、そこで根源的な生存価値や繋がりを、様々な生きものを通じて感じてもらえたらと思っています。大人も子どもも共通して、生きものを知ることで「怖い」「気味が悪い」などのネガティブな感情が減り、生きものの美しさやカワイイ部分に気付いてくれます。ある女の子などはクモを怖がっていましたが、生きもの調査イベント後、自らのTシャツに蜘蛛の絵を描いてくれと言ってきたので、油性マジックで描きました。気に入ってくれたようで、後日もそのTシャツを着ていたと報告を受けています。老若男女、子ども〜80代までが集まって、生きもの調査をした時、生きもの採集や展示の時に、世代を超えて会話が成立しているのです。「生きもの」たちって共通の話題として地域を結びつける魅力があると感じています。

ベノア:現代社会における農業と生物多様性のつながりについて、どのようにお考えですか? 

林氏:ざっくり言うと、日本は国土が狭く急峻なので、伝統的な農業(持続可能な農業)が行われる「里山」が奥山と人里の間にあることで、共生できていました。奥山〜里山〜人里←こんなかんじです。「日本の絶滅危惧種の50%は田んぼ・里山の生きものたち」その理由は、自然と人との間、緩衝地帯が農地だったことなのです。昔はローテクなので現在のように重機で山や木を削ったり、川や水路をコンクリートで固め、水を人間だけが使えるように独占したりはできなかったのですね。自然界に直線無しと言われるように、地形に合った様々な形の農地や作物・品種のバリエーションが多様になった。作物が植えられない場所には草木が生え、鳥や小動物、虫たちが住む場所があった。人が手入れをすることで、竹やヨシなどの増えやすい植物が抑えられて、林床に太陽光が差し、水面が開放されて鳥やトンボ、水生昆虫、小さな草花の居場所ができたり。昔の農家は様々な生きものたちを輝かせていたのです。

ベノア:今はどのような状況ですか?

林氏:今は品種も減ってきて、農地も大規模路線。1960年代にヨーロッパで農地を大規模化して生きものの棲家を奪い、肥料を入れすぎて水を汚染したり。その後小規模農業の方が環境に良いとEUはシフトチェンジしたわけですが、60年以上前の失敗とシフトチェンジが、日本ではほとんど知られていません。

だからこそ農業から生物多様性を豊かにすることが最も効果的だと思って、田んぼの生きもの調査を続け、生きものたちと接して実感してもらう草の根活動を続けています。楽しくなければ続かないので、イラストと得点で環境診断をするシートを開発したり、生物多様性ソングを余興でやったりして、農業と生きもの(自然)と消費者をつないでいます。ちなみにこのシートを見た面々が「面白い」ってなって生きもの認証を立ち上げました。

ベノア:弊社のウェブサイトをご覧になるのは主に企業や行政の方ですが、生物多様性にもっと取り組みたいと考えている組織にどのようなアドバイスがありますか?

林氏:ネイチャーポジティブでも、人の内面を揺り動かす、地域コミュニティーを円滑にする、色々ありますが、各企業の得意なことや、楽しみながら継続して取組むことで、社会的ノルマだけではなく、結果的に本業のインスピレーションになるようなリターンがあると思うのです。

今アドリブで、多様な視点が混在する文化(Mixed Multi-perspective culture)という造語を作ってみたのですが、行政だけではなく企業も地域文化も創っていける可能性を持っているわけです。景観や生物多様性、食文化も含め次世代にギフトを残せたら、100年後も感謝されているかもしれません。どんな「粋なやり方」をするか?

いきなり答えは見つからないかもしれません。でも生きもの調査をすれば、地域の足元に宝ものがあったりします。「開発が行き届いていないお荷物・弱点」と思われていた地域の景観やローテク文化が、その地域のチャームポイントだったとか。そうやってローカルの循環経済を土台にした上で、貿易やビジネスで豊かさを積み上げる発想にシフトできれば「粋で堅実なサスティナブル」企業・地域が生まれると考えています。

ベノア:アドバイスありがとうございます!そろそろインタビューの終わりが近づいてきましたが、生物多様性について、まず知っておくといい『豆知識』があれば教えてください!

林氏:風景(生態系)・生物の種類・遺伝子、この3要素が多様であることが生物多様性が豊かであること。ネイチャーポジティブの目指すべきところの三要素を意識すると、どこへいっても楽しめます。そのなかで、身近な生きもの探しは自身のアンテナを高めるにはもってこいです。家の周りの身近な生きものをスマホで撮影したり、書き出してみると、面白いと思います。

『ほ乳類』『鳥類』『は虫類』『両生類』『魚類』の5つに脊椎動物を分類すると、まずはベランダや庭にやってくる鳥たちに気がつくでしょう。鳥は昼間も見られるし、声で存在がわかるので、生きもの観察の基本と言われています。

身近なかわいい鳥、シジュウカラ (写真:林 鷹央)

ベノア:「まずは周囲の生物多様性に目を向ける」ということですね!最後に、今後挑戦してみたい新しい取り組みや、拡大を目指しているプロジェクトがあれば教えてください。

林氏:挑戦してみたいのは、日本発の生物多様性価値観の輸出(笑)。各国地域性があるので実際に行って自分の感性の幅を広げなくてはと思っています。アニメや漫画は発信しているので、海外で生きもの調査イベントをやってみたいですね。

ベノア:海外進出ですか!

林氏:12月にミエルカ合同会社を立ち上げて「生物多様性 ミエルカ Project(体験を通じた“叙情的見える化”がコミュニティーを活性化しネイチャーポジティブを実現する!)」とうたっています。「多様な視点が混在する文化」として理系だけではなく、文系も美術系も、社会・経済、歴史、体育、音楽、料理…様々な視点から生物多様性を語れる。総合的な大人の心の豊かさを広めていきたいです。

ベノア:若い世代向けの取り組みについてはどうでしょうか?

林氏:次世代へ向けては自然環境に関する授業を18年ほど教育機関でやってきたのですが、先日ベノアさんのBiodiversity Collageのファシリテーションを受けてすごく楽しく分かりやすかったです。これならより広い年齢層、多様な職場でも環境教育ができるとワクワクしました。

林氏による「生物多様性の歌」(音源はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=GLeH018ei_I

また環境教育をうけた次世代の若者たちが、生物多様性向上(ネイチャーポジティブ)をする事で仕事が生まれるような環境も整えていきたいです。生活を支える営みとしての仕事になるくらい、様々な生命や文化に光を当てることができる「生きもの調査・生きもの認証」をメジャーな職種にしたいです。これば私の「志事(しごと)=ミッション」だと思っています。

ベノア:これからも頑張ってください!今日はお時間をいただき、ありがとうございました!


詳しくは
林 鷹央 氏 

ミエルカ合同会社 CEO
田んぼソムリエ

武蔵野美術大学造形学部(修士)卒業。グラフィックデザイナー、自然保護団体、農業NPOをへて独立。「田んぼの生きもの調査」「環境学習指導」「生物多様性の講演」を全国の市区町村や学校、企業、農業団体、博物館等で展開中。2012年に開発した『田んぼの環境診断シート』ではビジュアルと数値化で田んぼの楽しい「見える化」を行い、専門誌『現代農業』に特集記事が複数年掲載され、環境保全型農業を推進する「加点式・生きもの認証」にも採用されている。農業と生物多様性に関する執筆・メディアでの解説など多数。生物多様性ネイチャーポジティブの社会実装を加速するため、2024年12月にミエルカ合同会社を設立。著書に「身近な生命100」「田んぼソムリエになる」がある。

モルガン・ベノア 

Codo Advisory株式会社
サステナビリティ・コンサルタント / アドミニストレイティブコーディネーター

エクス=マルセイユ大学院卒。EU-日本の気候協力と異文化関係の専門家であるサステナビリティコンサルタント。Codo Advisoryの教育サービスのメイン・ファシリテーターおよびトレーナーとして活動し、コンサルティングプロジェクトのサポートも行っている。Climate FreskおよびBiodiversity Collageの認定トレーナー、Digital Collageおよび2tonnes(フランス)の認定ファシリテーター。また、Codo Advisoryの月刊コラム「Codo’s Insights」に定期的に寄稿し、日本および世界のESG政策やトレンドを分析している。


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