ウィークリーニュース|2023年3月14日〜30日 

Codo Advisory は、世界と日本の気候変動対策や企業のサステナビリティに関する最新のイベントやトレンドをお伝えしております。直近の注目ニュースをまとめてご紹介いたします。

世界| IPCC第6次評価報告書(AR6)は、不可逆的な被害を回避するために迅速かつ大幅な排出削減を促す 

  • IPCCは、第6次評価報告書の最終章を出した。これまでの報告書の知見を統合し、地球への不可逆的なダメージを避けるために、迅速に大幅な排出量の削減を実行することの緊急性を示し、政策立案者にとって重要なポイントを要約した内容となっている。 
  • 報告書は、人間の活動によって発生した温室効果ガスの排出が地球温暖化を引き起こしていることを明言した。状況を悪化させないために、世界は2035年までに温室効果ガス排出量を2019年比で60%削減しなければならない。 
  • 世界はすでに1.1℃の温暖化を経験しており、不可逆的な変化を防ぎ、1.5℃の制限を超えないために、純排出量と総炭素収支の両方について、早急かつ大幅な削減対策をとることが求められている。しかし、気候変動を緩和するための政策を拡大しても、世界は 「近いうちに」それを超えてしまう可能性が高い。 
  • この記事についてもっと読む: The Guardian, Bloomberg, Carbon Brief 

Codoのコメント: AR6報告書は、これまでのIPCCの報告書の中で最も厳しく、緊迫感のある内容である。今後12年以内に2019年比でGHG排出量の60%削減を達成することは、厳しい要求だ。世界的に、私達は直ちに集中的な排出削減行動を取る必要がある。最近、気候関連の開示が急増し、1.5℃以下の未来に向けたScience Based Targetのコミットメントも行われているが、十分な企業行動の実現にはまだほど遠い。より深刻な気象現象、食料、エネルギー、水の安全保障の低下など、気候変動がもたらす悪影響がますます大きくなっていく中、遅れをとっている暇はない。科学的根拠に基づいた包括的かつ迅速な行動を、今すぐ取る必要がある。 

アジアパシフィック | サモア首相、気候変動の破壊的影響から太平洋の島民を守るよう世界に呼びかける 

  • サモアのフィアメ・ナオミ・マタアファ首相は、気候危機によって太平洋の人々が消滅してしまうことを防ぐため、世界的な行動を求める嘆願書を発表し、特に海面上昇と土地の喪失によって故郷を追われてしまう問題について警告を発した。 
  • マタアファ首相の声明は、IPCC AR6統合報告書の発表前夜に行われたものである。彼女は、IPCCの研究が危機に対処するために必要な決定を支援することに期待を表明した。 
  • この記事についてもっと読む: The Guardian, Carbon Brief 

Codoのコメント: 気候変動は、温室効果ガス排出国であり、気候変動の主役である「北半球」の人々よりも、「南半球」の島々や体制が脆弱な地域の人々に大きな影響を与えている。昨年のCOP27では、世界各国が損害賠償基金に投資することを約束した。この基金は、温室効果ガス排出国が、自分たちの行動によって大きな影響を受ける小国を支援する責任があることを認識するためのものである。しかし、海面上昇は太平洋の小さな島々にだけ影響を与えるわけではない。沿岸のあらゆる地域は、すでにその影響を感じている。ボストンは高潮による浸水を防ぐため、地下鉄の階段に遮水壁を設置する必要があり、東京は同じ影響を軽減するために、洪水防止壁やポンプ排水システムを先駆けて導入している。海面上昇は、沿岸地域に住むすべての人にとってのリスクである。 

米国 | 気候への影響が懸念される中、バイデン大統領が80億ドルのアラスカ石油プロジェクトを支持 

  • ジョー・バイデン大統領は、アラスカ北西部におけるコノコフィリップスの石油プロジェクトを承認した。環境保護主義者は、大統領が米国の北極圏の海域と土地での今後の掘削活動を禁止することを目的としていたため、気候変動への関与を尊重していないと主張している。 
  • しかし、同社は、国立石油備蓄地域アラスカにあるウィローの敷地にまたがる3カ所からの掘削を許可される予定だ。80億ドルを投じたこの開発は、懸案の米国の石油プロジェクトの最前線に位置している。 
  • このプロジェクトで、30年間で約2億4千万トンの二酸化炭素を排出すると推定されている。環境保護団体は、公有地での最大級の石油・ガス採掘プロジェクトが承認されたことを非難し、今後も戦い続けることを誓いている。 
  • この記事についてもっと読む: Bloomberg, Carbon Brief 

Codoのコメント: 化石燃料は本来、再生不可能な資源だ。ある場所で供給を終えたら、別の場所を探さなければならない。化石燃料に依存する社会が長く続けば続くほど、その需要を満たすために、以前は手つかずだった風景や生態系を破壊しなければならなくなる。新しい油田(または炭鉱、フラッキングサイト)を開発することは、非常にコストと労力がかかる。特に、すぐに利用できるものを使い果たし、エネルギー供給を継続するためにより遠隔地に行かざるを得なくなる場合はなおさらである。化石燃料の供給開発にかかる継続的なコストは、企業が依存し続けることのリスクを検討する際に考慮されなければならない。長期的な計算では、多くの場合、現在利用可能な再生可能エネルギー供給は、投資収益率の大きな可能性をもたらす。需要が大幅に減少すれば、石油供給の開発を続ける必要はなく、エネルギー需要を満たすために何百万トンもの温室効果ガスが放出されるのを防ぐことができる。 

欧州 | 欧州委員会、クリーン技術生産で競争するためのネットゼロ産業と重要原材料法を提案 

  • 米国の気候変動法の成立から8ヶ月、欧州委員会は3月16日に、欧州連合(EU)がクリーンテクノロジー製品の生産とグリーン移行に必要な原材料へのアクセスにおいて競争力を維持するためのグリーンディール産業計画の一環として、「ネットゼロ産業法」と「重要原材料法」の詳細を発表した。 
  • 今週末あたりに提案される新措置は、既存のグリーンディールロードマップを土台とし、欧州委員会が銅やニッケルなどの重要な原材料の10%を採掘できる地域の能力を高めることを目的として、グリーン技術の許可と生産目標の加速に焦点を当てたものである。 
  • これは、2030年までに「ネットゼロ」技術に必要な製品の少なくとも40%を生産することを目指す、EUの一般的な生産計画とも呼応している。この目標を達成するために、欧州委員会は、原料の採掘や加工を行う計画も「戦略的プロジェクト」として引き受け、合理的な許可や資金調達の恩恵を受けられるようにする。 
  • この記事についてもっと読む: Reuters, Bloomberg 

Codoのコメント: エネルギー安全保障は国家安全保障のバックボーンである。再生可能エネルギーのインフラ整備が加速する中、国内でのサプライチェーンの確保がますます重要になってきている。特に、低炭素社会への移行に不可欠なレアマテリアルの調達は、その傾向が顕著である。これらの鉱物の多くは、EUのような環境的・政治的立場をとらない国から産出されている。この重要原材料法は、内部調達の仕組みを精査し開発する国々から、すでに制定された、あるいは今後期待される多くの法律の一つだ。カナダ、米国、オーストラリアは、すでにこのような目的のために何らかの形で法律を制定している。 

世界| G7諸国、日本の化石燃料利用への提唱に反発 

  • 日本がG7議長国として天然ガス投資と発電用化石燃料の利用を促進することを提案したが、米国や英国を含む加盟国から反発を受けている。天然ガス(液化天然ガスを含む)への投資を求めた最初のコミュニケの草案には、関係者から疑問の声が上がっている。 
  • 特に、日本では水素やアンモニアを使った排出抑制が、環境面や経済面で懸念されている。 
  • 他のG7諸国は、気候変動対策を加速させる必要性と、電力部門におけるすべての化石燃料を排除するようにより野心的な計画を強調した。 
  • 2月22日に発表された予備声明は、4月15日から16日にかけて札幌で開催されるエネルギー・気候・環境に関する閣僚会議までに修正される予定である。 
  • この記事についてもっと読む: Bloomberg, Japan Times 

Codoのコメント: 日本は、国際社会からの避難に耳を傾ける必要がある。国内では、日本政府は「クリーン」なエネルギーの未来を追求すると宣伝してきたが、大きく排出するエネルギー源への実質的かつ持続的な投資を隠すために「クリーン」という言葉を使ってきた。10年前、天然ガスは石炭や石油に代わる「クリーン」なエネルギー源と考えられていたが、現在の理解では、天然ガスは非再生可能なエネルギー源であり、依然としてかなりの温室効果ガスを排出していることは明らかである。国際社会が、IPCC第6次報告書の影響や、気候変動による悲劇の緩和と復興にかかる高いコストと折り合いをつける中で、日本はエネルギー供給に対する立場をいち早く更新しなければならない。

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The above article is a summary of news hand-picked and commented on by our team of experts. We monitor a selection of leading international and Japanese sources, including generalist and specialized press, communication from public authorities, and publications from recognized non-profit organizations.

This edition was prepared by Ilayda Tenim and reviewed by Stefan Le Du.

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